ガンブルー液、黒染め法の化学

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ガンブルー液で染めてみたけど、思うように黒くならない・・・

赤錆が出てきた・・・

失敗の原因は、ガンブルー液の化学的な知識不足です。

今回はガンブルー染色の成功に必要な化学的知識をご紹介します。

ガンブルー液、黒染め法とは?

鉄の黒染め法とは、鉄を薬品で酸化させて黒い酸化皮膜(四酸化三鉄:Fe3O4)を作って金属の腐食を防ぐ技術です。

カメラのシャッター、カメラレンズの絞り、ヒートシンク、銃の本体やライフルのマガジンにも使われています。

サビを防ぐだけなら、三酸化二鉄(Fe2O3)でもいいのですが、発色を考慮すると四酸化三鉄:Fe3O4が一番キレイな黒なんです。

ガンブルー液とは、高濃度のアルカリ(水酸化ナトリウム)の中に酸化剤(硝酸塩や塩素酸塩)を加えたものです。

このアルカリは鉄を鉄塩とする働きがあり、酸化剤は鉄塩に酸素をくっつける働きをします。

鉄の黒染め法は、本来工業的には、沸騰した上記溶液に染めたい金属を沈めて酸化膜を作ることが一般的です。

しかし、高濃度のアルカリを高温にするのは非常に危険なため、簡易的にガンブルー液を染色したい金属に塗る方法もあります。

使うガンブルー液の違いや、染色方法で、赤錆がでたり、思い通りの色が出なかったり苦労されている方もいるのではないでしょうか?

発色の違いについて

様々なメーカーから、ガンブルー液が販売されています。物によっては黒でも赤褐色になったり、青みを帯びた黒になったりすることがあります。

これはなぜかというと、酸化膜はその厚さで色調が変わるからです

例えば、520Åでは赤黄色、580Åでは赤褐色、630Åでは紺色、680Åは紫、720Åで青色となり、これ以上膜が厚くなると黒褐色になります。(Å:オングストロームと読む。100億分の1メートルのこと)

酸化膜の厚さが厚くなるにつれ

赤→青→紫→黒

となります。

色調が変わっってしまう、つまり酸化膜の厚さが変わってしまうのは、2つの要因があります。

要因1 酸化させる時間

鉄の表面にガンブルー液を塗布している時間が長ければ長いほど酸化皮膜の厚さが厚くなります。

ガンブルー液を複数回重ね塗りした場合、ムラができるのもこの理由のためです。

要因2 ガンブルー液内の鉄以外の金属塩の存在

ガンブルー液内に、鉄以外の金属、例えばZn(亜鉛)やSn(スズ)が入っていると皮膜の色調が変わってきます。

例えば、

Zn:白味、Bi:赤紫色、Sb:緑藍色、Sn:青藍色、Mn:濃い黒

となります。

この様な鉄以外の金属を添加することで、酸化膜が作られる反応の速さが変わってくることで色調が微妙に変わってくるようです。

基本的にMn以外は酸化膜が作れれる反応スピードを遅くします。

ガンブルー製造業者は、各社独自の色合いを出すために、こういった微量金属の配合を独自に調整しています。

鉄の黒染めには、その他、防錆の機能の問題もあります。

黒く染まったのに錆びる?

ガンブルー液で黒く染色したのに、すぐに赤錆ができてしまったといった経験をされている方もいると思います。

原因として考えられるのは

原因1 酸化膜が薄すぎる

この場合、酸化膜が薄いので鉄のエッジの部分が黒く染まっていなかったり、黒でも赤味を帯びた色に染色されているはずです。

原因は酸化する時間が短すぎる、または液が薄すぎることです。

したがって対策としては、もっと長時間ガンブルー液と鉄を接触させる、濃い濃度で使用するということになります。

原因2 酸化終了後、完全にガンブルー液を除去できていない

黒に見える酸化膜には、多くの極小の穴が沢山空いています。

この穴にガンブルー液が残っていて、水で洗浄後も酸化が続いてしまったり、また金属表面の油汚れが残っており、金属とガンブルー液が接触できず、酸化膜ができないことがあります。

こういった原因で一見、黒く染まっているようでサビができてしまうことがあります。

対策としては

  • 金属表面をサンドペーパーやコンパウンドできれいに処理してから染色
  • きちんと脱脂してから染色(無水エタノール、アセトン(マニキュアの除光液が安い)、パーツクリーナー)

そして希望の染色度合いになったらすぐに水洗いして、完全にガンブルー液を除去し、酸化反応をストップさせる。

ガンブルー液が金属表面に残存しているとその部分だけ酸化反応が続いてしまいます。

よりきれいにガンブルー液を除去したいならば、染色した金属を沸騰した水で煮たり、ワイシャツの襟などの汚れ落とし用超音波洗浄機で洗浄することも有効だと思われます。

その後、工業用染色手法なら130度程度に加熱した鉱油などに漬け込みます。

そうすることで酸化膜表面の微細な穴にとどまっているサビの原因の水分、ガンブルー液、空気を押し出し、代わりに鉱油が穴にびっしりと埋まります。

こうして黒く染まった金属表面と微小な穴に油の膜ができ、さらにサビができにくい表面になります。

加温した鉱油に漬け込んだほうが確実なのですが、危ないのでドライヤーで水分を十分に乾燥させた後、表面に塗布することでも、完璧ではないのですが有効だとおもわれます。

おわりに

ガンブルー液を使った鉄の黒め法は、簡易できれいな色調の金属表面を作ることができます。

ブルーイングする方の技量や知識で微妙な色の違いだったり、防錆としての機能の良し悪しだったりに差が現れてしまいます。

今回の記事を参考に、読者の皆様がきれいな金属表面を作れれば幸いです。

参考文献

  1. 中野俊介. 鉄の黒染め法. 金属表面技術 6, 160–163 (1955).
  2. 小山亮清. “鉄の黒染研究:(第 1 報) 薬品処理法.” 聖徳栄養短期大学紀要 4 (1973): 1-6.

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